【遅刻遅刻〜!】漫画でよくあるあのシーンが実際に起こる条件を計算してみた話
スポンサーリンク
こんにちは。
漫画大好きポロロッカです。
皆さん漫画をよく読んだりすると思います。
日本が世界に誇る文化のひとつですからね、漫画って。
で、そんな漫画のあるあるといえば、
「いっけな~い遅刻遅刻~」ですよね。
いやまぁ、いつの時代の漫画だよっていう感じですけど、それでもこのシーンはドジっ子ヒロインの登場シーンとして今なお絶大な人気(?)を誇っています。
そしてこの後、必ずと言っていいほど十字路の曲がり角で男の子とぶつかります。
そんなあるあるシーンですが、果たしてあり得るでしょうか?
曲がり角にさしかかり、相手が視界に入ってから減速すれば、衝突前に静止することは不可能なのでしょうか?
というわけで実際に検証していこうと思います。
(ゴリゴリの数式が苦手な人はいきなりまとめに飛んじゃってください。)
もくじ
どう考えるか
計算するにはまず立式からです。
立式するために起こることを順序立てて考えていきます。
では衝突事故がこのような十字路で起こったとしましょう。
道の幅は5メートルで、その道の真ん中を秒速vメートルで等速直線運動しているものとします。
また、相手も自分も全く同じタイミングで交差点に差し掛かるものとします。
そして、次に相手が視野に入ってから衝突する瞬間を考えましょう。
はい、このように図示できます。
つまり、2人を結ぶ直線の間から障害物がなくなればいいので、この図の瞬間に相手が視野に入ります。
ここから、相手の存在という刺激が目から感覚神経を通り、脊髄を通過して脳に到達します。そのあと運動神経を通って筋肉に刺激が到達します。
そして体にブレーキをかけ始めるわけです。
そのブレーキによって完全に静止するまでにかかった距離が衝突点より前なら衝突を避けることができます。
逆にそれまでに止まれなかったならぶつかるわけです。
では早速、式を立てていきます。
式を立てる
ここで、ブレーキをかけたときに、体に一定の減速度がかかり始めると仮定します。その減速度をαとします。
また、自分(相手)の体重をW、地面と靴底の動摩擦係数をμ、ブレーキ力をFとします。
以上の状況を先ほどの図に書き込むと、このようになります。
ここでNとは、地面と靴底の間にかかる摩擦力のことで、先ほどの変数を用いて表すと、
N=μ×W …①
と表せます。
次に、ブレーキ力によって減速度αが生じたという状況を運動方程式で表すと、
F=(W/g)×α …②
となります。ここでgは重力加速度を表します。
最後に、ブレーキをかけ始めてから完全に静止するまでに進む距離xを求めてみましょう。これはただの等減速度運動の公式に当てはめて、
2(-α)x=0^2-v^2 …③
です。
はい、すべての立式が完了しました。
では実際に条件を求めていきましょう。
計算してみた
まず、靴底が地面につんのめらず、スリップするときの条件は、
N=F
です。この条件に①、②を代入してまとめると、Wは0ではないので、
α=μ×g …④
です。
今、靴底は自動車のタイヤの素材でできているとします。
タイヤと地面の間にかかる動摩擦係数は、このグラフで表されます。
傘も差さずに登校しているので路面状況はDryであり、
完全にスリップしている状況なのでSlip ratio = 1であるとします。
その時の動摩擦係数μ=0.72です。
これを式④に代入すると、重力加速度g=9.8(m/s^2)であることから、
α=7.056(m/s^2)
が分かりました。
次に、このαを式③に代入し、xについて解くと、
x=0.07086×v^2
つまり、ブレーキをかけ始めてから完全に静止するまでにかかる距離、いわゆる制動距離は、走っている時の速度の二乗に比例するこの値で表されます。
そしてもうひとつ、忘れてはいけないのが反応に移るまでに移動していた距離です。いわゆる空走距離です。
人が刺激を受けて、それに反応できるまでにかかる時間は、だいたい0.1秒と言われています。
(これは、国際的な陸上競技のルールにて、100m走などのスタートにおいて、ピストルの音から0.1秒以内に反応するとフライングになることをもとにした情報です。)
よって、空走距離は0.1×v(m)と表すことができました。
ではいよいよ大詰め。
お互いが視野に入ってから衝突する地点までの距離は、だいっぶ上のほうで出てきた図より、5メートルです。
そしてぶつかるということは、停止距離(空走距離+制動距離)が5メートル以上ということなので、これらを式にまとめると、
(0.1×v)+(0.07086×v^2)≧5
となります。
いま、vは明らかに正の値なので、その条件下でこれを解くと、
v≧7.724(m/s)
ということで秒速7.724メートルを超える速さで走っているとぶつかるという結果になりました。
まとめ
結果的に、秒速7.724メートルを超える速さで走っているとぶつかることが計算により判明しました。物理の力は偉大だ。
ではこの秒速7.724メートルとはどのくらいの速さなのでしょうか。
この速度で50メートル走を走ると、その記録は6.47秒です。
50メートル走で6.5秒切る女子高生を想像してみてください。
…むちゃくちゃはえぇぞ?
ちなみに調べたところ、
女子高生の50メートル走のタイム平均は8.99秒だそう。それに比べて6.47秒は速すぎる。
さらに驚くべきことに、
日本人女性で一番速い人は教員の小西美恵子さんという方で、その記録なんとピッタリ6.47秒だそうです。
日本人女性で一番速い人は誰?
教員の小西美恵子の6秒47です。
この方はオリンピックの出場経験は無いものの女子陸上選手としてアジア選手権などで多数の金メダルを獲得していた方です。100mの自己ベストは11秒74(1983年)だったそうです。
(中略)
高校生で一番足が速い男子生徒も大体このぐらい。
中学陸上部で才能のある男子生徒もこのぐらい。
女性は男性よりも体質的に瞬発力に圧倒的大差で劣るものの日本一50mの速い女性となれば話は別ですね。
6秒47・・・
そんじゅそこらの男どもではまず太刀打ちできない走力です。
ということで、
漫画あるあるのあのシーンで登場するヒロインは
全員小西美恵子さんということが導かれました。
めでたしめでたし。
↑ランキングに絶賛参加中
クリックしてくださるだけで励みになります。